「[マトリックスの]映画 の舞台は 2199 年、人間はコンピューターの熱源として「栽培」されている。つまり、ほとんどの人間は、巨大なコンピューターの支配下におかれているってわけだ。
なんか孵卵器みたいな特殊な昆虫(???)の体内で人間は眠り続け、コンピューターが作り出した 1999 年の仮想世界の夢を見続けている。
この仮想世界こそが「マトリックス」だ。人々はこの偽物の世界で一生を送ることになるんだけど、誰もそのことに気づかない。
そんなことになってしまった世界で「マトリックス」の存在に気付いた反乱組織がコンピューターの支配と戦うのがストーリーの骨子だ。…
仮想世界「マトリックス」は、偽物のイメージの世界という意味で、そのまま想像界になぞらえることができる。で、人間がマトリックスの夢を見ながら寝ている「現実世界」が現実界だ。…
救世主ネオの目に映るのはもはや仮想世界の、人をあざむく上っ面じゃない。彼はいまや、マトリックスを生み出しているプログラムのコードそのものを眺めることができるのだ。…ネオが見ているコード・システムこそが、ここでは象徴界に相当するってわけ。」
(『生き延びるためのラカン』 斎藤環 ちくま文庫 pp71-72)