20220918
どくとりん
9784829504444
敵の主力を完膚なきまでに打ちのめし敵を壊滅させるという壊滅戦の考え方が幅広く流布した壊滅戦の考え方が主流をなすに至ったこの傾向は20世紀後半に至るまで続いていた米国でも壊滅戦の考え方が主流を占めていたがベトナム戦争での敗北の教訓の分析を基に機略戦概念を深化させ機略戦の考え方は現在も対テロ戦争で実践されている戦争の目的は軍事力を投入して敵の軍事的抵抗力を打ち砕き政治的目的を達成することにある壊滅戦論者によれば敵の軍事的抵抗力を粉砕するためには敵の最も強力な部分(重心)を破壊する必要があるこの点に疑義をはさむのが機略戦論者である敵の重心こそが最大の障害であることを否定するわけではないしかし敵の重心に対して直接集中させて重心自体を破壊することだけが最大の障害を取り除く方策なのか?敵の重心を無能力化して敵による抵抗力を奪い去ってしまえば多大な犠牲を払って敵の重心を壊滅させるのと同じ効果があるそのためには敵の重心を重心たらしめている要素を分析し脆弱性を特定し弱点に対して攻撃力を集中させる敵の重心を支える重要な柱のいずれかが崩壊すれば重心そのものも安定性を欠き敵の抵抗力は麻痺してしまうこのように敵の重心に対する正面攻撃を避け敵の決定的脆弱性に対する集中攻撃により結果的に敵の重心に打撃を加えるという立場をとるのが機略戦論者である壊滅戦のように戦争の目標を敵の最も強力な要素を壊滅することに固定した場合柔軟性を欠くことになってしまう一方機略戦によると敵の重心を支える要素に決定的脆弱性を発見しそれらの一つあるいは数個に対して順次あるいは同時に集中的な攻撃を加えることによって結果的に敵の重心を機能不全に陥れることを目標とするつまりシステムとしての敵に対してシステムの脆弱性を破壊することによってシステムを制御する指揮系統が麻痺しシステム中枢を混乱に陥らせる壊滅戦と機略戦のいずれの立場をとるにしても敵の重心を無能力化してしまえば勝利は我が物になるわけだが敵の重心こそが抵抗力を生み出すのであって重心が壊滅すると敵の抵抗力は消滅する戦略レベルにおける重心は指導者あるいは指導的集団である場合が多い重心を特定するには理由としての決定的な能力(CC)ならびに要素である決定的な要件(CR)も同時に明らかにされる必要があるそして決定的な要件(CR)に機略戦論者にとっての攻撃目標である決定的脆弱性(CV)が存在するのである決定的脆弱性(CV)というのは単なる弱点というだけではなくそれが破壊をされることによって中枢系統が機能不全を起こすような弱点を意味する