大手回転ずしチェーン「スシロー」の店舗で、若い男性客が唾液をつけた指でレーンを流れるすしを触るなどした迷惑行為の動画が拡散したことで大問題に発展している。運営会社のあきんどスシローは警察に相談する方針を固めているが、専門家によると想定される被害額はなんと数十億円。回転ずしのビジネスモデルにおける「性善説の限界」が指摘されている。
ことの発端はスシローを訪れた若い男性客がしょうゆさしや湯飲みを舌でなめまわし、さらには誰が食べるかもわからないレーンを流れるすしに唾液を指で塗りたくるなどした動画をSNSにアップしたことだった。これがインフルエンサーを通して拡散。今や全国ニュースでも取り上げられる事態となっている。
今回の迷惑行為について、回転ずしなど食品業界に詳しい米川伸生氏は「スシローにとってばく大な機会損失になる」と明かす。
「動画の内容があまりにひどく、回転ずしにはもう行きたくない人が続出するのは確実です。スシロー規模になると、客が1%減るだけで約10億の機会損失となるが、今回の影響は1%減どころで済まない。客が数%減ったら単純計算で数十億円、10%減少したら100億円規模の損害になる」
スシローは昨年「おとり広告」問題が響いて客離れが起き、昨年12月期の客数は前年同月比で30%減。それだけに新年を迎えた1月から巻き返しを図ろうとプロモーションに注力していただけに、迷惑動画は最悪のタイミングだった。
また、今回の件は回転ずしが客の性善説に基づき、誰でも触れる状態ですしをレーンに流すというビジネスモデルそのものを脅かす事態にもなっている。
米川氏は「スシローにとって、ただの迷惑行為で終わらせることができない〝事件〟になった。業績回復を目指す途上を妨害されたことに加え、類似の迷惑行為を抑止するためにも民事上の損害賠償を請求せざるを得ない」と話した。裁判の結果でどうなるかはともかく、男性客は数十億円から100億円規模の賠償請求をされるかもしれない。
今回の件について米川氏は、回転ずしのビジネスモデルにおける「性善説の限界」を指摘。レーンを流れるすしの中から好きなものを選べるという飲食業界における唯一無二のエンターテインメント性は、悪意を持った人物によって壊されようとしている。
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