ジャーナリストの伊藤詩織さん(33)が、自身を中傷するツイッターの投稿に自民党の杉田 水脈 衆院議員(55)から繰り返し「いいね」ボタンを押されて精神的苦痛を受けたとして、杉田氏に220万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が20日、東京高裁であった。石井浩裁判長は、請求を棄却した1審・東京地裁判決を変更し、杉田氏に55万円の賠償を命じた。
伊藤さんの代理人弁護士は取材に「中傷投稿に『いいね』を押す行為で賠償を命じた司法判断は初めてだと思う」と話している。
判決によると、杉田氏は2018年6~7月頃、伊藤さんが元TBS記者から性的被害を受けたと訴えていることなどを批判する25件の投稿について、「いいね」を押した。
今年3月の地裁判決は、「いいね」には幅広い感情が含まれ、好意的な感情を示すこと以外の目的に使われることもあると指摘。その上で、杉田氏に加害の意図があったとは認められないとして請求を棄却した。
これに対し、高裁は、杉田氏が以前からインターネット番組などで伊藤さんの批判を繰り返していたことを踏まえ、「名誉感情を害する意図があった」と認定。約11万人のフォロワーがいる国会議員の杉田氏が「いいね」を押したことについて、「一般人とは比較しえない影響力がある」と述べ、賠償責任を認めた。
ネットの中傷問題に詳しい神田知宏弁護士は「中傷投稿に『いいね』を押しただけで即座に違法となるわけではないが、高裁の判断を踏まえれば、社会的な立場やトラブルの状況によっては賠償が認められる場合も出てくるだろう」と指摘している。
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