「円安はプラス」の虚実。現場から見えた日本経済の課題とは

1名無しさん@Next2ch:2022/08/19(金) 19:05:06.19 ID:qx2bVYYS

 「円安は日本経済にプラス」。自動車など製造業を中心に輸出が経済をけん引してきた日本にとって長年の「常識」だった。だが、足元の円安ではプラス面よりマイナス面を訴える声も大きい。実態を探ろうと現場を取材すると、見えてきたのは日本経済が抱える大きな課題だった。

「国内回帰は難しい」
 千葉県袖ケ浦市。東京湾に面し化学コンビナートなどが建ち並ぶ工業団地の一角に、化学メーカーや食品メーカー向けにタンクを製造するプラントメーカー、コトブキテクレックスの千葉工場がある。

 工場を訪れると、天井まで吹き抜けになった広々とした建屋内で、従業員が背丈の倍以上ある金属製のタンクの溶接に追われていた。急速な円安が進むが「今さら国内回帰は難しいですね」と、案内してくれた松本憲幸社長は、工場内を見渡しながらつぶやいた。

 同社は千葉、三重、佐賀の国内3拠点に加え、中国とタイに工場を構える。約80人いる従業員のうち、海外は約30人だ。

 今年創業90年を迎えた同社が、最初の海外拠点として中国・上海に進出したのは2004年のことだ。この時期、多くの企業がアジアに進出した。経済産業省の統計によると、04年度の日本企業の海外現地法人数は前年度比8%増の約1万5000社。なかでもアジアへの進出数は約13%増え、進出先として中国本土が米国を超えるようになった。

 中国は01年に世界貿易機関(WTO)に加盟し、国際的な貿易ルールに沿って市場開放した。東南アジア各国も1997~98年に起きた通貨危機から立ち直るため、外資を積極的に誘致し関税を引き下げたりした。

 同社が海外進出したのも、円高で取引先が次々と工場を移転させたことに加え、人件費の安さや進出環境が整備されたことが大きいという。松本さんは、「タンクの原材料であるステンレスの仕入れ価格は日本と同じだったが、人件費が格安で中国の工場は進出初年度から黒字になった」と話す。

円高でメリット
 同社の海外事業の拡大は、その後も続いた。10年にタイに工場を建設。12年には中国の工場の移転、拡張に踏み切った。その間、為替市場では円高が進んだ。08年のリーマン・ショックで円高が加速、11年の東日本大震災後は投機的な取引もあり10月31日に戦後最高値の1ドル=75円32銭を付けた。

 円高は、同社にとってメリットになった。中国では、現地製の最新の生産設備が割安で購入できた。「『もう1台買っちゃおうかな』と気軽な感じで機械が買えた。中国の工場拡張は当初想定より大きくなった」。松本さんはそう振り返る。日本に自社製品を「輸出」する際にも強みとなった。国内で安く販売できるようになり、「今まで振り向いてくれなかった食品大手が機械を使ってくれるようになった」という。

政府は円安誘導
 一方、政府は、輸出産業へのダメージを懸念してたびたび円安誘導の…

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