「店長は上司から日常的にパワハラを受けていました。いつも疲れ切った様子だったのですが、こんな惨(むご)い形で亡くなるとは思わなかった。死の理由を有耶無耶にされたくないのです」
小誌にこう告発するのは、大手寿司チェーン店「無添くら寿司」で働く現役の従業員である。
激しい炎と立ち昇る黒煙――。4月1日の午前4時20分頃、山梨県甲府市にある「無添くら寿司」の駐車場に停められた乗用車から突如、火の手が上がった。
(略)
神奈川県出身の中村さんは地元の大学を卒業後、くら寿司に入社。甲府の前は横浜の店舗に勤務していた。
「本当に優しい人でバイトの子にも怒りません。面倒見が良く、従業員に好かれていました。趣味は御朱印集め。甲府に来た直後は『善光寺に行ってみるといいよ』なんて話をしました」(冒頭の現役従業員)
しかし、今年の3月にスーパーバイザー(SV)のX氏が甲府に着任して以降、日に日に憔悴していったという。元従業員が証言する。
Xの怒声に客からクレームが
「Xは店長とは同期ですが上司です。関東出身なのになぜか関西弁を使う。アルバイトや部下など自分より立場が下の人には威圧的な物言いをするタイプ。常にイライラしていて、店長は目を付けられていました」
別の元従業員が明かす。
「Xが店舗に来た初日のことでした。昼のピーク時は寿司が流れるレーンを皿でいっぱいに埋めないといけないのですが、この日はできていなかった。キレたXは『おい中村! お前がレーンを埋めるって言ったんやろ! ちゃんとやれや!』と大声で怒鳴り始めたのです」
X氏は中村さんに頻繁に激高するようになり、出勤する度に罵声を浴びせた。
「Xの大きな怒声は、厨房からお客さまが食事をするフロアにまで響いていました。『大きな声で叱りつけるのは止めてくれ』とお客さまからクレームが入ったこともあります」(同前)
叱責は電話でも行われた。さらに別の元従業員が証言する。
「Xから電話がかかってくる時は、大抵30分は話し込んでいました。店長は『すみません、すみません』といつも電話越しにペコペコしていた。電話を切った後は、事務所でぐったりしていました」
終わりの見えない叱責に心は蝕まれていく。山梨県は「まん延防止等重点措置」の対象外だったため店舗はフル営業。アルバイトが休めば、中村さんは休日返上で出勤していた。
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