東芝は29日夕、米原子力子会社のウエスチングハウス(WH)など2社が米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請したことについて都内で記者会見を開いた。綱川智社長は「適用はWHの事業再生にとって不可欠で、海外原子力事業のリスクを遮断するという東芝の方針にも合致する」と説明した。2社の負債総額は計98億ドル(約1兆900億円)。
再生手続きは即日開始され、2017年3月期にWHグループが東芝の連結対象から外れる。16年末にWHの巨額減損が発覚して以降、綱川社長は海外原子力事業からの撤退・縮小を強調してきた。破産法の適用申請は、その第一歩となる。
綱川社長は「株主や投資家など全てのステークホルダーに迷惑と心配をかけたが、今後の健全な経営に向け、海外原子力事業のリスク遮断を確実なものにしたい」と語った。「一時的には追加損失が膨らむが、半導体メモリー事業への外部資本投入に加え、聖域なき事業売却を検討していく。『新生東芝』として安定的な利益の確保と財務基盤の強化に全力で取り組む」とし、エレベーターやビル管理などの社会インフラ事業を軸とした事業の再構築を進める。
東芝のWHへの債務補償額は完全履行する構えだが、違約金や損失リスク対応金などが生じる可能性もある。東芝の17年3月期の連結最終損益は最大で1兆100億円の赤字となる見通しとなった。国内製造業としては過去最大の赤字となることについて、綱川社長は「経営トップとして責任を非常に大きく感じている。事態の収拾と改善に全力で取り組みたい」と沈痛な面持ちで話した。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ29HKC_Z20C17A3000000/