シンガポール=吉村英輝】就任から1カ月が過ぎたフィリピンのドゥテルテ大統領が、公約に掲げた「治安改善」をめぐり強権姿勢をあらわにしている。警察が400人を超える違法薬物の容疑者を現場で射殺。恐れをなした薬物中毒患者や密売人ら約57万人が当局に出頭するなど、取り締まりは一定の成果を上げているが、人権団体からは“超法規的殺人”との批判が上がっている。
フィリピン国家警察は2日、ドゥテルテ氏が就任した翌日の7月1日から8月2日までに、麻薬の取り締まり現場などで容疑者402人が警官に射殺されたと発表した。逮捕者は5418人だった。同国は死刑制度を廃止している。
就任前の半年間で、同様に警官に射殺された容疑者は約100人。ドゥテルテ氏はダバオ市長時代、自警団による薬物犯罪者の「暗殺」を容認する姿勢も示しており、警官以外による射殺人数も増加しているもようだ。
人権団体や非政府組織(NGO)など約300団体は2日、ドゥテルテ氏の薬物取り締まりが国際規範を逸脱しているとし、国連機関に「容疑者殺害の扇動の中止を大統領に要求するように」と要請した。
ドゥテルテ氏は先月7日、収監中の2人、逃走中の1人の計3人の中国出身者を「麻薬王」と名指しして“宣戦”を布告。全国の薬物密売の75%が、マニラ首都圏にある刑務所内で取引され、現職国会議員や元役人も関与しているとして摘発を進めている。
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