東京外国為替市場で円相場が約1年5カ月ぶりに1ドル=108円台を付けた。米利上げが遠のいたことに加え、安倍晋三首相の発言を受けて財務省・日銀の市場介入への警戒感が後退しているためだ。市場では100円台半ばまで円高が進むとの見方が強い。
円相場は年初からの3カ月余りで10円以上円高に振れた。原油安や株安が世界経済の先行き不安を強め、安全資産としての円の買い圧力が高まっている。3月にはイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が講演で、利上げを緩やかなペースで進める可能性を示唆。円安要因だった日米金利差拡大への期待もしぼんだ。
さらに安倍首相が米紙とのインタビューで「恣意(しい)的な為替介入は控えるべきだ」と発言。日本の通貨当局は円売り・ドル買い介入に慎重だとの見方が広がり、5日の海外市場では一時、109円台を付けた。
7日には菅義偉官房長官や財務省幹部が「一方向に偏った動きだ」などと円高をけん制する発言を繰り返したが、「口先介入」の効果は限定的だった。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志・経済研究部シニアエコノミストは「急激でなくじわりとした円高である上、5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の議長国なので介入には動きづらい」とみている。
世界経済が回復して米利上げ観測が高まらない限り、円高基調が転換するのは難しい。市場では6月末までに1ドル=105円程度まで円高が進むとの見方が強く、2016年中の100円突破を予想する声もある。
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016040700748&g=eco