日本人の総合的なアクリルアミド摂取量は、海外と比較して同程度、または低い数値でした。こうした結果から、食品安全委員会の評価としては、次のように判断されました。
『「非発がん影響(神経や免疫に対する影響等)」については「極めてリスクは低い」。「発がん影響」については、動物実験とヒト対象の摂取量とがんとの関連性の研究から、「ヒトにおける健康影響は明確ではないが、公衆衛生上の観点から懸念がないとは言えない」』
私たちが普段から接している食品に広く含まれていますし、栄養のバランスを図る食べ方をする上でも、ゼロにすることは難しく、できるだけ「減らすように努力することが望ましい」としています。
■アクリルアミドが生成される原因は?
そもそもアクリルアミドは、食品中のアスパラギンと果糖・ブドウ糖などの還元糖が、「揚げる」「焼く」「炙る」等の120度以上の加熱調理をすることによって、食材に含まれる水分が減ることで生成されます。
毒キノコや河豚毒のように、なにか特定の食品ではなく、炭水化物を含むポテトフライやポテトチップスなどのスナック菓子、クッキー、トースト、シチュー、焼肉などの様々な加熱調理をする一般の料理に含まれていますから、ショッキングなお話です。
アクリルアミドは動物実験から「遺伝毒性のある発がん物質」と判断されていて、この「遺伝毒性」とは遺伝子(DNA)を傷つけて、細胞をがん化させる性質があるとされています。ただし「遺伝」とは言っても、必ずしも「子や孫などに遺伝するものではない」とされています。
アクリルアミドを食事から摂取することとがんとの関連調査が行われていますが、一貫した傾向は見られていません。がんには喫煙や飲酒など、その他の要因も関係しているためです。
■市販食品も企業努力で低減
アクリルアミドが話題になって以来、日本の食品事業者も低減するための対策に取り組んできました。
農林水産省の調査では、ポテト製品のアクリルアミド濃度を平成18、19年度と25年度で比較したところ、アクリルアミドの濃度の平均値は、25年度では4割以上減っていました。
■家庭でできる調理のコツは和食?
では私たちは、家庭でどのようなことに気をつければよいのでしょうか。
食品安全委員会では、次のように提言されています。
・食材を揚げ物や炒め物など、高温で長時間の調理は控える(焦がさないように、食材をよくかき混ぜる)
・野菜類、芋類は、切った後、加熱前に水でさらしたり、下ゆでする
・じゃがいもは冷蔵庫にいれて貯蔵しない(冷蔵すると還元糖が増えるため)
不思議なことに、「蒸す」「煮る」「茹でる」などの水を利用した調理ではアクリルアミドはほとんど含まれていませんでした。
こういうことから考えると、和食は、主食のごはんやめん類は炭水化物ですが、「炊く」「煮る」「茹でる」という調理が多いので、アクリルアミドについてはリスクの低い調理法といえるでしょう。
■極端な情報に振り回されないように
こういう話題が出ると、極端に怖がる人や、また不安を煽る人もいます。アクリルアミドが含まれる食品を一度摂取したから、すぐにガンになる、というお話でありません。
特に野菜や果物、海藻類、豆類、キノコ類などには、ビタミンやミネラル、ポリフェノールなどの健康に役立つ栄養成分も含まれています。不足しがちな人は、意識して食べるようにすることは健康を維持・増進するためにも必要なことでもあります。
アクリルアミドに限りませんが、古くから伝わる