両生類のなかでもイモリだけがなぜ、オトナになっても四肢の再生能力を持つのか——生物学上の250年来の謎がとけた、と筑波大などのチームが発表した。幼生期の再生能力は成体になるときに失われるが、別の新たな再生メカニズムを獲得することがわかったという。
英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに30日、論文が掲載された。
両生類は一般に、幼生期には脚を再生する能力を持つが、変態して成体になると、その能力が低下するか全く失われてしまう。しかしイモリだけは、成体になってからも繰り返し完全に再生することができる。この現象が発見されたのは18世紀中ごろで、仕組みは未解明のままだった。
筑波大の千葉親文(ちかふみ)准教授(再生生理学)らは、遺伝子改変技術でイモリの筋肉の細胞に目印をつけ、再生する過程を調べた。その結果、幼生は筋肉の元となる幹細胞が活発に働くことで再生するのに対し、成体では幹細胞は働かず、切断面の筋細胞が成熟しきっていない状態に戻る「脱分化」という変化が起きていた。これを材料に新たな組織が作られ、再生していた。
千葉さんは「成熟した細胞を再生のために動員する仕組みは、成長に伴って幹細胞が減少し、働きが低下したときに有利だと考えられる」と話す。メカニズムの詳細を解明できれば、老化の抑制や自己再生医療などの手がかりとなる可能性もある、としている。
http://www.asahi.com/articles/ASJ3Z3SHJJ3ZUJHB004.html