進化の「ほぼ中立説」を1970年代に発表した国立遺伝学研究所(静岡県三島市)の太田朋子名誉教授(81)がスウェーデン王立科学アカデミーから「クラフォード賞」を受賞して帰国し、14日までに記者会見した。太田氏は「直接には役に立たない基礎研究なので、思いがけなかった」と喜びを語った。
クラフォード賞は日本では2009年に免疫学分野で大阪大の岸本忠三元学長と平野俊夫学長が受賞しており、3人目。
生物の突然変異は60年代半ばまで、生存に有利か不利のどちらかであり、有利なものが生き残るという自然淘汰(とうた)説が主流だった。しかし、遺伝研の木村資生名誉教授(94年死去)が突然変異のほとんどは有利でも不利でもないとの「中立説」を発表。太田氏は、わずかに不利な「ほぼ中立」の変異でも、集団の規模が小さければ偶然広がる確率が高まるという説を発表した。
ほぼ中立説は90年代以降、たんぱく質や遺伝子の研究が進むにつれ、認められるようになった。太田氏は今も遺伝研に通って最新の論文を読んでおり、「遺伝子の仕組みがこれほど複雑とは思わなかった。分子レベルで解明されつつあり、面白い」と話した。
ソース
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2015051400047