昨年、NASA EagleworksがEM Drive(電磁駆動: electromagnetic drive)の実験結果を発表して話題を呼んだが、真空中でも推力が得られることが確認されたそうだ( NASASpaceFlight.comの記事、 io9の記事、 本家/.)。
EM Driveは密閉された空間でマイクロ波を反射させることにより、推進剤を放出することなく推力が得られるというもの。2001年ごろに英国のSatellite Propulsion Researchが研究を始めており、中国の研究者も研究成果を発表している。ただし、EM Driveで推力が得られる仕組みは解明されておらず、運動量保存の法則にも反するため懐疑的な見方が強い。NASA Eagleworksを率いるHarold White博士は、EM Driveでは電磁流体力学(MHD)駆動における推進剤イオンの役割を量子論的真空が果たすとの説を提唱していた。しかし、これまで真空中での実験結果がなかったことから、推力はマイクロ波により発生した熱の対流によるものとの仮説を多くの物理学者が支持していたという。今回、真空中で推力を得る実験に成功したことにより、この仮説は否定されることとなった。
EM Driveはまだ研究の初期の段階であり、仕組みの解明などさらなる検証が必要となるが、実現すれば火星まで70日程度で行けるようになり、太陽系から4.3光年離れたアルファ・ケンタウリ系へのミッションも夢のような話ではなくなるとのことだ。ただし、実際にどこから推力が発生しているのかという点については、厳格な検証が必要となるだろう。
http://science.slashdot.jp/story/15/05/05/0751209/