近年、書店の健康コーナーやドラッグストアで
よく見かけるようになった「酵素」関連商品。
食事の代わりに飲むというダイエット用酵素ドリンクの広告を
目にしたという方も多いのではないでしょうか。
・誤った知識が蔓延しているのが酵素
メディアも同様の状況で、酵素ブームがしばらく続くのは間違いなさそうですが
「ベストセラー本も含めて、科学的に根拠のない情報がベースになっていることが多い」
と危惧するのは、高畑宗明博士(農学)。
初の著書『「腸内酵素力」で、ボケもがんも寄りつかない』(講談社+α新書)では
科学的根拠をベースとした酵素の正しい知識を紹介しています。
・消化酵素と代謝酵素
酵素は、食べ物の消化・吸収を助ける「消化酵素」
身体の正常な働きを保つための「代謝酵素」と、大きく2つのグループに分けられます。
どちらも私たちの生命活動に欠かせないものです。
このことからも酵素が私たちの健康を支えていることがわかりますが
現在出回っている酵素の知識や情報はどこが間違っているのでしょうか。
・根拠があやふやな酵素栄養学
「科学的に根拠のない理論とは具体的になにかというと、酵素栄養学と呼ばれる理論です。
エドワード・ハウエル氏が提唱した理論ですが
「人間が生産できる酵素の量は決まっている(だから、酵素を節約すると長生きできる)」
「消化に使われる酵素を節約するために、酵素が含まれる生の食品を摂取しよう」
という主張をしています。
(中略)人間が生産できる酵素の量が決まっているというデータはありませんし
生の食品の摂取が、人間の酵素の節約につながるということもありません
(パイナップルや大根など、一部の食品は他の食品を分解する酵素が含まれるので
消化を補助するという意味合いはあります。
ただ、基本的に消化に関しては、きちんとした咀嚼や適切な消化管の状態の維持が大切です)。
(中略)酵素もたんぱく質の一種ですから、食べた(飲んだ)酵素も
肉や魚のたんぱく質と同じように、私たちの身体の消化酵素によって分解されてアミノ酸になり
吸収された後に適したかたちに組み立て直されます。
一部は酵素として生まれ変わるでしょうが
酵素を飲むことは、たんぱく質を飲むことと何ら変わりはないのです」(同書より引用)。