このような現状に苦言を呈する専門家も少なくありません。
ブリティッシュコロンビア大学のピーター・ライナー博士は、DIYユーザーが脳の間違った部位を刺激したり
電極配置を誤って不適切な電流を流すことで脳を損傷する危険があると問題視しています。
ライナー博士は「tDCSによって数日間、場合によっては数カ月間という
非常に長い時間効力が持続するという報告がありますが
裏を返せば長期間、副作用が残ってしまう危険性もあるということです」と述べ
特に子どもや若者によるtDCSの使用に伴う神経発達への影響を指摘しています。
このようなtDCSの誤用・乱用による健康被害の危険性が指摘されている中で
tDCS用に出力する電流値を制御するツールも市販されています。
例えば、Foc.us V2というポケットサイズの電流コントローラーや
専用ヘッドセットfoc.us EDGE headsetはその代表例とのこと。
しかし、これらのツールが医学的な見地から安全性を確保できるという保証はどこにもありません。
むしろ、アメリカ食品医薬局(FDA)や欧州医療機器指令(MDD)の
安全性基準を満たさない可能性が十分あるとのこと。
さらに、このような「専用」ツールは価格が数万円と高いため
DIYユーザーに実際にはそれほど活用されていないという状況もありそうです。
このような状況の中、「医学的知識を持たない人がtDCSツールを自作することを
安全性の見地から規制すべき」という声も一部で上がりつつあります。
また、正しい情報を提供するメーカーのみ装置の作成・販売を認める許可制にすべきだという意見もあります。
しかし、ライナー博士は、許可制にして安全性を満たした製品のみの販売を認めたとしても
研究開発費用が製品価格に上乗せされることから
DIYでtDCSを作ろうとするユーザーには支持されないだろうと予想しています。
むしろ、20ドル(約2400円)そこそこからtDCSキットを自作できることから
DIYユーザーがアングラな世界に潜るだけだと自作tDCSの規制に反対しています。