次の日も、その次の日も、二人は話し続けた。
お互いに貴重な宝石を手に取るかのように、お互いの言葉を拾って、耳に残す。
何ヵ月もそんな生活をしていても、話の種が尽きることはなかった。
雲が流れたとか、花が咲いたとか。
それだけで良かったんだ。
一つだけ、男の子はある重大な秘密を隠していた。
話そうか話さないか迷っていたけど、結局話したところであまり意味はないんだ。
ある朝、男の子は気付いた。
あぁ、そろそろだなって。
男の子の体の中には、治療が出来ない病気が潜んでいた。
ベッドから起きるのも辛かった。
数ヶ月前と比べたらだいぶ細くなった腕で、なんとか立ち上がる。
窓の外では通学途中であろう子供たちが走り去っていくのが見えた。
コンコン、とノックが鳴る。母さんだ。
あら、起きていたのね。
今日も大人しく良い子にしているのよ。
その目に浮かぶ哀れみは、もう既に隠れることを忘れているようだ。
母さんと父さんが仕事へ、姉さんが学校へ向かう。
リビングにあるテーブルの上には、男の子の食事が用意されていなかった。
今に始まったことじゃない。数日前からこうなのだ。
男の子の家は決して裕福ではないから。
重い体を引きずるように、姉さんの部屋へ向かった。
きっと、女の子がもうすぐ起きる。。