女の子の目論見は当たっていた。
色とりどりの花畑の中心、ひゅー、ひゅーと細く呼吸をする男の子がそこに横たわっていた。
そうだろうとは思っていた。
「今日はやけに遅かったわね」
女の子がいつもの口調で言った。
男の子はその声に気が付くと、ろくに見えない目で女の子の方に顔を向けた。
「ごめん」
ぼそっと何を言ったか聞き取り辛かったかもしれないが、これが男の子の今の精一杯だ。
「いいのよ」
女の子は男の子に近寄って、血に染まった手を握る。
そして汗や血でぐしゃぐしゃの頭を撫でる。
「今度は、壁なんてないんだね」
男の子が言う。
「そうらしいわね」
「僕たちにとって、これは悲劇かな」
「どうかしら」
「君はいつもそうやって、言葉を濁すよね」
男の子はにこっと笑った。
女の子はその顔が大好きだった。
その瞬間、涙が溢れ出した。
「答えを出すのは嫌いなの」
涙ぐんだ声で、女の子は言う。
「なかないで」
「泣いてない」
「僕は答えを知っている」
「言って」
「答えを出しちゃうと、物語が終わってしまう。これが答えだ」
「そうよ」
「こんな時間が永遠に続きますように」
男の子が息を引き取った。
女の子は男の子の手にぎゅっと握られたガラスの破片を手に取った。
悲劇というのは鏡に写すときっと、とても素敵なお話になるのよ。