更に半年後、男はまた東南アジアのその国を訪れていた。一度ひどい目にあわされていたのにだ。
トラックを借りた。現地人を雇った。荷台に乗った。今回はたくさんのダンボールを抱えていた。しかしそれは知人へのお土産ではない。
男は運転手にスラム街へ向かわせた。男は期待と興奮で胸を高鳴らせていた。
スラム街につくと、男は大きな声で叫んだ。その国の挨拶の言葉だ。ストレートチルドレンにだって理解できた。彼らは男の元へ集まってきた。
男は荷台のダンボールを開け、素早く中身をばらまいた。それはたくさんの消しゴムとクレヨン、そして液体のりだった。
男は半年前帰国してから、これらをストレートチルドレンたちにばらまくことが、男にとって本当の幸せを届けると思いついたのだった。
走り去りながら消しゴムやクレヨン、液体のりを拾うストレートチルドレンを見て、男は心から笑った。男からは爽快感が溢れていた。