長年連れ添ってきた彼女と、ついに結婚することになった。
彼女は嫉妬心が強い子で、他の女の子と話をするだけですぐに不機嫌になるんだ。
でも、本人は浮気をまったくしないし、俺だけを愛してるって何度も言ってくれた。
だから俺は、彼女と結婚することに決めたんだ。
挙式を終えて、一戸建てを買って二人の新婚生活が始まった。 妻は毎朝俺を玄関から見送って、
夜はかならず料理を作って待っていてくれる。 俺は本当に幸せだった。
そして数年後、妻が初めての子供を孕る。 医者によると女の子だそうだ。
俺は初めてのことで、それこそ大喜びした。 妻も笑顔で自分のお腹をなでて喜んでいた。
やがてお腹もぽっこり出てくるようになり、俺は妻の腹に耳を当てて、もうすぐ生まれてくる我が子の様子が
気になって仕方がなくなるようになった。 朝起きたとき、夜帰ったとき、俺は毎日のように妻のお腹から我が子を可愛がった。ある日、病院から仕事先に一通の電話が鳴った。 妻が流産したのだ。
俺は上司に無理を言って、急いで妻が担ぎこまれた病院に向かった。
そこで俺は、産婦人科の担当医から、流産の事実を聞かされた。 嘘ではなかった。
俺は病室で寝ている妻のところへ向かった。 妻は疲れたような、悲しいような目で窓の外を眺めていた。
俺は「残念だったな・・・」と呟いた。
「・・・そうだね」と妻も呟いた。 その後に、振り絞るような声で、こう続けた。
「でもあたし、また子供つくるよ。 死んじゃったあの子の分も生きられるような、元気な男の子をね・・・」