もわぁ
中川「うっ……」
――それは、中川にとって初めての臭いだった。
まず鼻についたのは、喩えるならばコンソメスープのような臭い。
それだけなら嫌な臭いではない、むしろ食欲をそそる匂いと言っても過言ではないだろう。
しかし。
普通ならすーっと鼻から抜けていくべき匂いが
いつまで立っても鼻にこびりついたままになる。
海藻類が滲み出す磯臭さと、腐ったチーズのような腐臭を混ぜ込んだような臭いが
コンソメスープのような臭いの後に連なって、中川の嗅覚をベトベトに侵す。
3ヶ月。風呂は愚かシャワーすらも浴びず、下着すらも変えていないと豪語する両津の股間で熟成された
腐った汗の臭いと皮脂の臭いを吸収したカウパーの悪臭が――
世界に羽ばたく企業の御曹司である中川圭一の嗅覚と、脳に焼き付いていく。
中川「ゲホッ…ゲホッ……」
両津「だ、大丈夫か中川?」
傲岸不遜。
粗にして野。
卑怯千万――
思いつく限りの悪口を全て上げても、余り無くその一つ一つが脳内の人物像と一致する。
そんな上司の自分を思いやるような言葉に、中川は安心感を抱く。
中川「大丈夫です、先輩……。」
両津「そ、そうか……?じゃあ……」
中川「…はい」
今まで数々の料理を堪能してきた端正な舌の粘膜が、世界で最も不潔と言っても過言ではない肉棒にまとわりついて行く。
両津「おっ…お…お…お――」