ある日の満員の日比谷線内にて、ただならぬ臭いが充満す
我がキッと目の前の初老の老人をひと睨みするに、その老人、目を背け下を見る
はたして出処はいずこか、次いで目に入りたるは、やはり老人を睨むおなごの姿
その姿、まさに鬼のごとし
その姿につられて、二三人は老人を見やる
しかして次の瞬間、顔を赤らめながら駅へと降り立つ目のタレ具合が春樹顔の中年を我はしかと見たり
我は自らの過ちを反省し、その老人な冤罪を晴らし、春樹顔の中年に相当な報いをなすことが使命と決意す
次の日の同刻、我は糞尿を入れた鞄を春樹顔の中年の下で開放す
たちまち立ち込める悪臭に一同騒然とするが、まさか鞄に糞尿の入りたるを想定する人間は一人としておらず
みな春樹顔の中年を憎悪の目で見やる
哀れ春樹顔の中年、我が下した鉄槌により裁かれしこの中年は、すかしっ屁の犯人に成り下がる
この世に神はいるか、いなければ我が神となるのみ
我の人知れず行いし善行により本日の日比谷線もかくのごとき平穏を取り戻りたり