オレは
ようやく
のぼりはじめた
ばかりだからな
この
はてしなく遠い
オナホ坂をよ…
オレは
ようやく
のぼりはじめた
ばかりだからな
この
はてしなく遠い
オナホ坂をよ…
あの穴もこの穴もLED(ひ)がともり
暖かなしあわせが見える
オナホール職人の朝は早い
「まぁ好きではじめた仕事ですから」
最近は良い型が取れないと口をこぼした
まず、素材の入念なチェックから始まる。
「やっぱり一番うれしいのはお客さんからの感謝の手紙ね、この仕事やっててよかったなと」
「毎日毎日温度と湿度が違う
機械では出来ない」
今日は納品日
彼は商品をワゴンに詰め、秋葉原へと向かった
基本的な形は決まっているが、最近のユーザーの嗜好に合わせ
多種多様なものを作らなければいけないのが辛いところ、と彼は語る。
「やっぱ冬の仕事はキツイね、愚痴ってもしかたないんだけどさ(笑)」
「でも自分が選んだ道だからね。後悔はしてないよ」
「このホールはダメだ。ほら、すぐに裂けてしまう」
彼の目にかかれば、見るだけで出来不出来が分かってしまう。
技術立国日本、ここにあり。
今、一番の問題は後継者不足であるという
仕込みに満足できないとその日の営業をやめてしまうという
30年前は何十ものオナホール工場が軒を連ねたこの街だが
今では職人は彼一人になってしまった
問題は中指を入れて感触を確かめるのに、5年はかかると、匠は語る
「自分が気持ちよいのももちろんだけど、
使ってくれる人はもっと気持ちよくないといけないね」
「もちろん出来上がった物は一つ一つ私自信で試しています」
ここ数年は、安価な中国製に押されていると言う。
「いや、ボクは続けますよ。待ってる人がいますから───」
下町オナホールの灯火は弱い。だが、まだ輝いている。
「時々ね、わざわざ手紙までくれる人もいるんですよ
またお願いしますって。ちょっと嬉しいですね」
「遠くからわざわざ求めてこられるお客さんが何人もいる。
体が続く限り続けようと思っとります」
「やっぱねえ、手ごねだからこその弾力ってあるんです。
機械がいくら進化したってコレだけは真似できないんですよ。」
1973年、オイルショックで原料の価格が3倍にまではねあがり、
一時は店をたたむことも考えたという
「やっぱりアレですね、たいていの若い人はすぐやめちゃうんですよ。
手でやって方が早いとか、犬がいるからいいとか……
でもそれを乗り越える奴もたまにいますよ。
ほら、そこにいる斉藤もそう。
そういう奴が、これからのオナホール界を引っ張っていくと思うんですね」
最近では海外のオナニストにも注目されているという。
額に流れる汗をぬぐいながら「本物に追いつき、追い越せですかね」
そんな夢をてらいもなく語る彼の横顔は職人のそれであった
今日も彼は、日が昇るよりも早く生地の整形を始めた
明日も、明後日もその姿は変わらないだろう
そう、オナホール職人の朝は早い