やべぇな
やべぇな
その日、俺は全裸で街を散歩していた。やわらかい風が肌に直接当たるのが心地よかった。日々蒸れがちな股間はすっきりとして俺は解放感にあふれていた。
しばらく歩いていると、歩道に1匹の海老が落ちているのを見つけた。俺は驚いた。なぜこんなところに海老がいるのか。にわかには目の前の光景が信じられなかった。
一方で嬉しくも感じていた。海老が大好物だったんだ。俺はその海老を持ち上げて手のひらに載せた。そうすると頭としっぽが手のひらからはみ出るくらいの大きさだった。海老は死んでいた。
俺は家に帰ることにした。母ちゃんにその海老を海老フライにしてもらうためだ。俺は海老を落とさないように気を付けながら、急ぎ足で歩いた。チンコは急かすように俺の太ももにペチペチと当たっていた。
家に帰るには、途中にある神社を通ると近道なんだ。家や商店が並ぶ通りに突然現れる神社なんだが、参拝に来る人なんてめったにいない寂しい神社だ。
だが俺は少し用心しながら神社に入った。そこの神主がとてつもなく怖いオヤジだったからだ。俺はよく友達と神社の境内でいたずらをしたが、それを見つけるとオヤジはすぐ怒鳴った。
俺は海老を両手で包むように大事に持ちながら、できるだけ足音を立てないように静かに歩いた。
ところが神社の裏に回ったあたりでオヤジを見つけた。掃除でもしていたんだろう。オヤジは俺を見つけると近づいてきた。俺は逃げようと思ったのだが、どうにも体が動かない。オヤジという存在に俺はすっかり委縮していたんだ。
オヤジは俺の目の前に来ると、鋭い目で俺をにらみつけた。俺はますます怯えた。オヤジは低い声で言った。
「その恰好はなんだ」
「あの、散歩してて」
「何を持っている」
「海老です」
「見せてみろ」
俺はオヤジに海老を見せた。オヤジはときおり指先で海老をつついたりして真剣に観察していた。突然オヤジは言った。
「この海老は俺のだ。よく届けてくれたな」
オヤジは俺の手から海老を取り上げた。そしてそれ以上何も言わずに、神社の境内から出て行った。
今になって思うんだが、あの海老は車海老だったんじゃないだろうか。