僕は新品のテニスラケット。初めての飼い主に大事なところを握られてマゾヒズムに目覚めてしまった変態ラケット。
ご主人様は握力がとても強い。大きな手が僕の下半身をぎゅうぎゅうに締めつけるたび、僕はぎしぎしと恥ずかしい声で喘いでしまう。
ラケット生初の試合は大変だった。
親戚のテニスボールちゃんと挨拶を交わす間もなくご主人様は僕たちふたりにキスさせたんだ。一瞬なにが起こったのかわからなかった。
次の瞬間、テニスボールちゃんは宙を舞い、相手の男とキスをした。
あの子があんなにビッチだとは思わなかった。誰とでも口づけを交わす……そんな子を好きになりかけていた自分を恥じると同時に、内側から溢れ出る快感に動揺を隠しきれなかった。
――気持ちいい。
キス……気持ちいい……キス……気持ちいい……キス……もっとしたい……キス……キス……キスキスキスキス……好き……大好き。
「来いよ、テニスボールちゃん。君がその気なら僕にだって考えがある。飽きるまで何度だって君の唇を奪ってみせる」
理性を忘れた僕は空に激声を浴びせた。
試合が終わるまでの時間、大勢の観客に見守られながら僕たちはキスをした。