海底に向かって沈んでいくんだ
なぜか俺は体を動かすことができなかった
俺は身じろぎひとつできないで沈んだんだ
周りにはイルカやら小魚やらいっぱい泳いでいたけど俺に近づいてくることはなかった
みんな俺を遠巻きにして観察していた
やがて俺は海底に着地した
海底と言ってもそこまで深くなかった
海面が見えていたし、うっすらとだけど日の光も届いていた
でも周りにはなにもなかった
ただ砂地が続くだけ
さっきまで近くを泳いでいた魚たちもいない
本当に静かな海で、俺は無償にさびしくなった
俺は段々ネガティブになった
家族と疎遠になってること、友達が少ないこと、一人で過ごした幼少時代
これらの思い出が次々に浮かび上がった
俺は誰にも必要とされていないんだと思った
誰にも気づかれずにこの海底で塵になるまで過ごすんだと思った
そのとき、海面の一か所が歪むのが見えた
同時に現れたひとつの影
その影はどんどん大きくなる
俺はそれが人影だと思った
ようやく助けが来てくれた、俺を助けてくれる人がまだいたんだとうれしくなった
影は休むことなく近づいてくる
俺はついにその影が誰だなのか見分けがついた
ゴリラだった
もちろん知らないゴリラだ
ゴリラは犬かきのような不格好な泳ぎ方で近づいてくる
俺は逃げようと思ったがやっぱり体を動かせない
ゴリラは近づくと俺の体を抱えた
そして再び海面を目指して上昇した
ゴリラの胸板がやけに生暖かかったような気がした
海面から顔を出したところでこの夢は覚めた
全身はびっしょりと汗をかいていた