初めて息子に手渡す時、若干緊張したのを覚えています。
あらかじめスーパーで買っておいた、桃が大きく描かれたピンク色の缶。
まだ小さかった息子は、バイクの修理工をしている
夫の背中を見て「お父さんの様になりたい」と意気込んでおりました。
そのためか色に対しての拘りも強く、「黒や青は男の物」「赤やピンクは女の物」
といった具合に分類していて、コーラの赤い缶にも難色を示し飲むのを嫌がったほどです。
飲むのを躊躇っている息子を見て、少し不安になった私は
缶を開けグラスに注いでみることにしました。
恐らく初めて見るであろう色に、僅かに浮かぶ炭酸。
透明なガラス越しに眺めているうちに抵抗が薄れたのか
息子は少しずつ飲み始めたのです。
一口、また一口とそれが喉を通る度にまるで天国にいるような
感覚に酔いしれているようにも見えました。
そうして飲み終えた後、息子はこう言ったのです。
「ここがネクターか」
https://i.imgur.com/t0dAvxe.jpg