その日の夜もスーツの男は現れた。俺は思いきってそいつに「通り魔事件について何か知ってるんじゃないですか」って聞いた。そいつはいつものにやけ顔だったけど「どうしてそう思うんだ」って言った。
俺が「あなたは深夜にこの辺りでなにが起きているのか知っているような口調だった」と言うとそいつは「そうだ。たしかに俺は深夜の出来事について知っている」と言った。俺は思わず声を荒げて「やっぱりお前か」と言った。
ところがそいつは鼻で笑って「実行してるのは俺じゃない」と言った。そして続けて「お前だって知ってるだろう」と言った。
俺は「あの時間は僕は寝てるんです。知ってるはずないじゃないですか」と答えた。
男は静かに笑って「やはり覚えてないのか。まあ知らない方がいいかもな」と言ってまたどこかに立ち去った。