母親は何事か呟きながら男にゆっくりと近づいてくる。母親もまた表情が読めなかった。うつろで血走った目に、小さく動いている唇。男は急に不安になった。
男「お母さん?大丈夫ですか?」
母親「……が出ていけ」
男「……?」
母親「お前が出ていけ」
男「は?」
母親「ここは私たちの家だ。お前が出ていけ」
男「ちょっと!なにするんですか!」
母親は男の前まで来ると、両手を男の首にかけた。そのままぐぐっと持ち上げる。
男「ちょ、お母さん……!」
抵抗しようにも幼女が体にしがみついていて身動きが取れない。男は幼女を引き剥がそうとしたが、無駄だった。
男「うっ………ぐっ……」
母親「お前が出ていけ」グググ
男の首を締め付ける力はますます強くなっていく。一寸たりとも動かすことのできない体から、力が抜けていくのを感じた。
男「かっ……」
天井の裸電球が見えた。それきり、男は意識を失った。