深夜
ある夜、例によって金縛りにあったあと、男はどうしても寝ることができないでいた。
男(完全に目が冴えてしまった)
男(まいったもんだ。最近は金縛りが特にひどい)
その夜の空には雲がひとつもなく、月明かりが寝室の中まで射し込んでいた。
男(……水でも飲もうかな)
男は起き上がると、廊下を伝って台所まで歩いた。水道からコップに水を注ぎ、一口に飲み干す。
その時、外でなにやら物音がした。男はコップを持ったまま台所の窓から庭を覗いた。すると、小さな黒い影が庭を横切るのが見えた。背丈は子どもくらいだろうか。
キャアアアアアアアアア
ダダダダダ
その声は金縛りにあっているときに聞こえる声と同じだった。驚きのあまり男は危うくコップを落とすところだった。
男(今の……もしかして……)
それ以上のことは考えることさえ不気味だった。
男は流し台にコップを置くと、急いで寝室へと戻った。