電車通りに出ると、美しく飾り立てた
時計屋の店先が眼に止った。
小形な梨地の金側時計が一つあった。
「いい時計だな、」と彼は思って、窓際に立ち止った。
正札が裏返っていた。番頭が居た。
「その時計はいくらするんです。」と彼は尋ねた。
「これですか、正札より一割位はお引きしますが、如何でございましょう。」
と番頭は答えながら、正札を表返した。三十八円と記してあった。
彼はぼんやりそれを見ていたが、やがてふいと立ち去った。
「あんな安いのは駄目だ、」と思った。
電車通りに出ると、美しく飾り立てた
時計屋の店先が眼に止った。
小形な梨地の金側時計が一つあった。
「いい時計だな、」と彼は思って、窓際に立ち止った。
正札が裏返っていた。番頭が居た。
「その時計はいくらするんです。」と彼は尋ねた。
「これですか、正札より一割位はお引きしますが、如何でございましょう。」
と番頭は答えながら、正札を表返した。三十八円と記してあった。
彼はぼんやりそれを見ていたが、やがてふいと立ち去った。
「あんな安いのは駄目だ、」と思った。