金魚 #7

7!ken:終戦の魔女-ローレライ-◆S9mloQXxdU:2016/03/06(日) 17:57:24.48 ID:Twfo5J0M

 電車通りに出ると、美しく飾り立てた
時計屋の店先が眼に止った。
小形な梨地の金側時計が一つあった。
「いい時計だな、」と彼は思って、窓際に立ち止った。
正札が裏返っていた。番頭が居た。
「その時計はいくらするんです。」と彼は尋ねた。
「これですか、正札より一割位はお引きしますが、如何でございましょう。」
と番頭は答えながら、正札を表返した。三十八円と記してあった。
彼はぼんやりそれを見ていたが、やがてふいと立ち去った。
「あんな安いのは駄目だ、」と思った。

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