金魚 #6

6!ken:終戦の魔女-ローレライ-◆S9mloQXxdU:2016/03/06(日) 17:52:15.40 ID:Twfo5J0M

 そのときふと、地方の友人へ書かなければ
ならない手紙があるのを、彼は思い出した。
「落付いてゆっくり手紙も書けない生活ほど惨めなものはない、」
と誰かが言った言葉を、彼は頭に浮べた。
彼は微笑んで手紙を書き出し、用件の次に
つまらないことを長々と書添えた。
 何にもすることがなかった。
 十時頃にその手紙を出しに外へ出た。
 風がなくて暖かだった。桜の花がちっていた。
彼は懐手をしたままぼんやり歩いていた。

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