ベンチに座り、草木を撮影するフリをして公園の入り口を狙う。天使の羽とも形容されている「ランドセル」を背負った姿を撮影するには遊び始める前でなければならないからだ。
しかしコイツが存外難しい。ジュニアアイドルなどの飼いならされたロリのようにポーズをしてくれるわけでも目線を向けてくれるわけでもない、どころか野生のロリは目があったらアウトだ。さらにそれを、公園の植物を愛する風流な人を装って撮らなければならない。さながら風景に溶け込み獲物を狙うハンターだ。
「来たか……」
植物の写真を適当に取りながらちらちらと辺りを窺っていると、お目当ての娘が公園の入口に向かって歩いてきた。
やわらかそうな白い肌、磨き上げられた水晶のように澄んだ瞳、世界が嫉妬するような髪、丸みを帯び始めたばかりの未成熟な躰、そして屈託のない笑顔。彼女の魅力を挙げれば際限がない。
彼女の名前は「カナ」と言うらしい、彼女の友人がそう呼んでいたのを聞いた事がある。
それにしても一発目で彼女に当たるとは幸運だ、長居というリスクがなくなった。パッと撮影してササッと退散できそうだ。
「ほぉ、オオイヌノフグリが咲いたか」
花に夢中になっている様子を演じながら画角にカナちゃんが入るのを待つ。
やはり今日はラッキーデイのようだ。彼女からは死角になる位置に花が咲いており、しかもそれがローアングルを狙いやすい背の低い花と来ている。
「もう春が来……へあっ!?」
目が合った。正確にはカメラ目線のカナちゃんが液晶画面に写った。
ヤバい、確実にバレた。
「おじさんなにしてるの?」
俺があたふたしていると、カナちゃんが蔑んだような顔をしながら話しかけてきた。