容器の問題になって、彼は更に困った。
硝子の容器なら、そしてその家に在る
一番大きな容器でも、二匹が精一杯
だそうだった。彼は折角選んだ五匹の中から、
更に二匹を選まなければならなかった。
硝子の容器に金魚を二匹入れ、上から新聞紙で包み、
それを紐でぶら下げ、三円七十銭という驚いた価を払って、
金魚屋から出てきた時、彼は陰鬱な気分に閉されてしまっていた。
胸がむしゃくしゃしながら、心が滅入っていた。何のために
金魚を買ったのか分らなくなった。日が西に傾いて、
街路の空気が妙に慌しかった。
彼は渋面をしながら、重い金魚入れを下げて、足を早めた。