マーガレット「……」
鼻たれ「……」
マーガレット「あの子たち、大丈夫かしら」
鼻たれ「……だと良いな」
マーガレット「冷たいわね。モテないわよ、そんなんじゃ」
鼻たれ「うっせーんだよブスッ!話しかけんなボケ!なにイイ女演じてんだよ?ブスだからね、お前は」
マーガレット「見た目の醜さより、心の美しさが人を惹き付けるのよ。逆もまた然り」
鼻たれ「うっぜ」
マーガレット「……助けに行くわ」
鼻たれ「は?」
マーガレット「次、食事の配給がきたら全力で死んだふりをするの」
鼻たれ「……」
マーガレット「……」
鼻たれ「一人でいけよ。俺はこの極寒の中、果てしない旅にブスと二人で出るつもりはない」
マーガレット「そう、わかった」
鼻たれ「……ちっ」
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アリス「……ハァハァ」フラフラ
ハゲ「おい、大丈夫かよ」
アリス「……ハァハァ」
ハゲ「やばそうだな。一旦休憩しよう」
アリス「……アリスは」ハァハァ
ハゲ「……は?」
アリス「アリスは、どうなっちゃったの。トランプの裁判……」ハァハァ
ハゲ「……トランプ、裁判、アリス」
アリス「……ハァハァ」
ハゲ「……」
アリス「お名前、なんて言うの……?」
ハゲ「名前?俺の?」
アリス「……」
ハゲ「……そんなこと知ってどうする」
アリス「……」
ハゲ「……」
アリス「……」
ハゲ「『テレス』だよ」
アリス「……名前が、あるのは良いこと」
テレス「……お前は?」
アリス「『アリス』。」
テレス「……『アリス』か。良い名前じゃないか。誰がつけてくれたんだ?」
アリス「……内緒」
テレス「……酷なことを言うが、お前はもうじき死んでしまうだろう」
アリス「……知ってる」
テレス「……そうか。俺もあんまり余裕がない」
アリス「……知ってる」
テレス「もう少し長生きして、植毛して結婚して子供つくって、普通に生きてみたかったなあ」
アリス「……私はそうは思わない」
テレス「なんで?」
アリス「……名前をもらうことができたから。わたしの人生で唯一、人からもらったもの」
テレス「……」
アリス「初めてだけど、最期でいいの。マーガレットみたいに、知りすぎて不幸にはなりたくない」
テレス「……知らなければ傷つくこともないか」
アリス「……」
テレス「……」
アリス「……眠くなってきちゃった」
テレス「……俺も」