エリカがショッピングモールにつくと、時計は12時半を指していた。
西口を入ってすぐ左のカフェテラスに、見知った顔を見つけたエリカは、少し口角を上げた。
「あらですりん。貴女がエリカより早いなんてね」
「久しぶりだね、エリカ」
最近連絡がなく心配していたが、相変わらずゆるい笑みを浮かべながら彼女はそう返してきた。
手元には飲みかけのカプチーノが置いてある。
「ああ、エリカもなにか飲もうかしら」
負けじと、近くに居た店員にコーヒーを注文する。
しばらくすると、一杯の熱々のコーヒーが運ばれてきた。
「カプチーノなんて、ですりんは相変わらず子供っぽいわね」
そう言って一口。うぇぇ、苦い。
「うふふ。はい、砂糖」
察したように砂糖をいれてくれる友人に、少しほっこりとする。
「......それで?何よ、話したい事って。エリカも暇じゃ無いんだから、端的に話してよね」
もちろん一日暇である。
「うん。実は......」
「な、なによ......」
ごくりと生唾を飲み込むエリカ。
「実はね......エリカに、......エリカに会わせたい人が居るの!」
満面の笑みを浮かべるですりん。
「......はぁぁ!?」
生唾を戻したくなるエリカ。
「うふふ。ごめんねエリカ......黙ってて......でもその人凄く素敵な人なの。今朝もね......」
溢れだす自慢話を、ちょっとまったと話を遮る。
「え、え、......深刻な感じで呼び出しておいて、あんたがエリカにしたかったのはコイバナ......!?」
「え?なにかいけなかった?」
「はぁ......心配して損したわよ......もう」
呆れたような安心したような表情のエリカ。
安堵からか、少し眠くなってきた。
「......ああ、ですりんのせいで欠伸が出るわよ......で?何よ。今朝も?」
「うふふ、今朝もね」
「......うん......なに......?」
「今朝もたくさん虐めて貰ったのよぉ」
そう言って腕を捲るですりん。そこには、大小いくつもの痣や傷跡が犇めいていた。
「は、はぁっ!?あんた!!それ......どお......したの......よ......」
吸い込まれるような眠気に襲われるエリカ。
回りの景色がグルグルと溶けてゆく。
「うふふ。どうしたの、エリカ。眠いの......?もう。しょうがないんだから」
「あ......んた......な......たの......ょ」
そして、エリカは暗い暗い眠りに堕ちていった。