これはわたくしの体験談なんですけどね
数十年前に、旅先の旅館に泊まる事になったんです
暑い夏の日で、田舎なもんだから夜には鈴虫やカエルの鳴き声がよーく聞こえてくる
畳が敷いてある狭い一人部屋だったんですけど、疲れと暑さで私はそこにバタリと倒れ込んだ。電気もつけず
ふーっと意識が遠くなってくる。あー寝そうだなぁなんて思ってると、「ジジジ」と外から音が聞こえる
初めは気にする事もなく遠退いていく意識に身を任せた
「ジジジジ」また音が聞こえる。どうやら虫の鳴き声でも無さそうだ。次第にゆっくりと目を開いてその音に集中しだした
「ジジジジ」また聞こえる。今度はゆっくり顔を上げその場から窓の外を覗いてみる。ジッと猫のように聞き耳を立てたけれども、音がしない
恐怖心なのか好奇心なのか、取り敢えず窓の外まで身を乗り出して確かめる事にした
暗闇に慣れた目を凝らし、少し遠くに見えたのは井戸だ。古臭く、草で囲まれていて当然使われていないであろう井戸がある