自宅へ戻ると、写真などをもとに、背後関係を見てみました。
1階を歩き回っている「本体」(何であるかは伏せておきます。土地へ縛られてはいますが、出張して動くこともあるのでうかつに波長があうと危険ですから)は、千数百年前の怨霊です。
本来は、この土地のものではなく、因縁を背負った不幸な一族に執り憑いた状態でやってきた悪霊のようです。
一族を惨死に追込みながら、強烈な結界を形成し、自らを土地に呪縛してしまった形となりました。
負の結界はその吸引力により、捕まえられるものは何でも取り込んでしまいます。写真の中には犠牲となった浮遊霊などが多数みられました。
そしてその中に、決定的な取り込みがあります。ある時、気がおかしくなった住人がいて、とんでもない大変なことをしでかしてしまいました。
屋敷を増改築する際に、道祖神が邪魔になり、なんと、石仏を井戸に投げ込んでしまったようです。現代ならまだしも、普通の昔の人がそんなことをするはずはありませんから、余程、狂った状態だったのでしょう。
オマケに、その井戸は、その後、そのままの状態で埋められてしまいました。榎本君が、神仏の罰かも知れないと言っていましたが、正にその可能性は大です。
「本体」を核とする結界内で、井戸の石仏が新たな強い核と化し、いわば、二重ブラックホールを形成していることになります。
例の少女は、これらの吸引にひっかかってしまった、もっと新しい一族のひとりです。今から百数十年前のものだと思われます。母親が怨霊にやられたため、苦しい目にあったようです。病気になり、他の場所で亡くなりましたが、念だけはここに残りました。例の猫は、その娘が可愛がっていた猫です。
いずれにしても、浄化できるような代物ではありません。1日も早く、転居すべきです。私は、電話で馬場君にその旨を伝えました。
しかし彼等は、転居の際に持ち金を使い果たしたらしく、すぐには越せない、とのこと。
彼等も、重なる不穏な現象に嫌気がさしていたが、お祓いなどでおさまるのならば、、、、と思って私に相談をもちかけたもようです。
私が、、、
「だめだ、、。」
と告げると、
「そうか、やっぱりね、、、。」
と納得し、出来るだけ頑張ってバイトをして金を貯め、急いで転居することを約束してくれました。
その後、2ヵ月ほどで、彼等は転居に至りますが、その間に随分と失うものがありました。霊障が原因の、人間関係のもつれです。