(ごめん大失敗)
(最初から貼り直す)
7年前の6月、夜10時ごろ、自宅の電話がなりました。いつになく、どきっとする音だったのを覚えています。
ミュージシャンの馬場君からでした。
「どうもオカシイ、口では説明できない。夜分申し訳ないが、来てみてほしい」
とのこと。
馬場君はバンドの合宿所として、川越に近い、ある一軒家に引っ越したばかりでした。いつにない彼の深妙な声に、いやーな緊迫感を感じましたが、長い付き合いの彼の頼みなので、行ってみることにしました。
そして、出かけようと玄関にでた瞬間、目の前のドアを誰かがいきなりノック。
開けてみると、友人の茅野君が一升瓶をかかえて立っていました。
馬場君に呼ばれて出かける旨を話すと、
「馬場君とは面識も有るし、単独で行くべきではないと思うので同行する」
と言い出しました。
とりあえず車を出し、その車中で話し合いました。その日はたまたま暇で、急に私の顔を見たくなったのだそうです。
茅野君はもともと感の鋭い人で、私の顔を見た瞬間、
「何かあったな」
とピンときたといいます。
馬場君はいくつかの因縁を抱えた人で、以前から問題を起こしやすいタイプの人でした。
茅野君は、私を通して、馬場君の波乱万丈ぶりを知っていましたが、今回は今までとは違うように感じる、という点で、意見が私と一致しました。
車で30分ほど走ったとき、茅野君が突然、
「うわぁーーっ」
と声をあげました。
話を聞くと、
「一瞬道路の前方に、身長50mはあろうかという真っ赤な仁王さんが、「来るな!」のポーズで立ちはだかった」
というのです。
彼はその当時、仏像の知識をほとんど持ち合せておらず、「仁王」と表現しましたが、後日写真集を見せて確認したところ、明王部の中でも不動明王の立像に一番似ていたそうです。
初めての訪問だったので、馬場君に最寄りの駅前まで迎えに出てもらいました。
馬場君を駅で拾い、車中で「何事か」と問うと
「格安で二階家、いい物件だと思ったが、どうもオカシイ、とにかく来て、見てから、意見を聞かしてくれ。」
といいます。
到着すると、そこは目の前を高速道路が走り、雑木林に三方を囲まれた10戸ほどの分譲住宅の中にある一軒でした。囲まれていない開いた方の、道路に面した角にたっており、築10年位でした。
車を降りると、まず、私はその家に向けてカメラのシャッターをきりました。
梅雨の中休みといった気候で、蒸し暑い夜でした。