おー
おー
これはこの世のことならず
死出の山路の裾野なる
さいの河原の物語
聞くにつけても哀れなり
この世に生まれし甲斐もなく
親に先立つありさまは
諸事の哀れをとどめたり
二つや三つや四つ五つ
十にも足らぬおさなごが
さいの河原に集まりて
苦患(くげん)を受くるぞ悲しけれ
からだを朱に染めなして
一重つんでは幼子が
紅葉のような手を合わせ
父上菩提と伏し拝む
二重つんでは手を合わし
母上菩提と回向する
三重つんではふるさとに
残る兄弟我がためと
礼拝回向ぞしおらしや
昼は各々遊べども
日も入相のその頃に
地獄の鬼が現れて
幼き者の側に寄り
必ず我を恨むなと
言いつつ金棒振り上げて
積んだる塔を押し崩し
汝らが積むこの塔は
ゆがみがちにて見苦しく
かくては功徳になりがたし
とくとくこれを積み直し
成仏願えと責めかける