翌年から村は大飢饉に陥ってしまう。
地震や台風などの天災。
農作物の流行り病。
海や川で取れていた魚は死に絶えたかのように、てんで取れなくなってしまった。
自ずと村は疲弊していった。
伝染病が蔓延し、どんどん人が死んでいった。
唯一医学の知識を持った先生も、伝染病にかかりこの世を去った。
村人「住職さぁん!俺らどうしたらいいんだっ」
女「もう食べる物もほとんどなくて、子供が育てられない……!」
住職「……」
住職(これは天罰なのかもしれない……)
男「こんな村、はやくに出るべきだったんだっ……。この先どうやって生きていけば……」
見回り「なぜわしらがこんな目に……わしらが何か悪いことをしたと言うのか……」
住職「……」
住職の頭に浮かぶのは、あの親子の顔
住職(私は神を信じる者でありながら、とても愚かな決断をした)
住職(ひと一人の命より、村の安定を願ってしまった)
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寺に戻った住職は、あの親子が眠る大きな棺桶を開けた。
住職「……」
中には、誰も入っていなかった。
住職(私が間違っていた……。あのとき村人たちに全てを話すべきだった……)
住職(この大飢饉は、あの親子の私怨によるものではない。愚かな決断をした私に対する、神からの罰だ……)
住職は立ち上がり、村の広場へと向かう。
胸の内に隠した箱の紐を解き、すべての真実を村人たちに話した。
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見回り「……わっわしは……なんてことしちまったんだ……」
住職「……」
女「そうよ……!全部あんたのせいでこうなった!」
男「今すぐその腹切って、責任取れやがれ!」
見回り「す、すまねぇ……!本当に……すまねぇ!!」
住職「……やめましょう」
女「でも金さんを……。尻男を殺さなければこんなことにはならなかったのよ……!」
住職「だからといって、見回りを攻めても何も変わりません」
住職「私共が今しなければならないことは、金さんと尻男に懺悔することです」
女「……」
住職「皆さん、寺の仏間に集まってください」