ーー朝
金「ん~!おはよう、尻男」
金「……尻男?」
ダッダッダッダッ
住職「金さん……大変だ……!」
金「住職さん……どうしたんです……?」
金「それより尻男そちらに行って」
尻男が、殺された
金「……え?」
住職「昨日の夜に抜け出して外に出たらしい。それを見回りの奴が見つけて『化け物』だと……」
金「……」
金「住職さん、冗談にしちゃちょいと性が悪いんじゃないですかね」
住職「……」
金「信じませんよ、そんなこと」
住職「……」
金「あーあほくさ。あんたにはここ貸してもらった恩もあるし、礼を言うならば限りがない。そんくらいお世話になっとる」
金「でも言って良いことと悪いことの分別なんて、あんたが一番ついてんでしょうに」
住職「……嘘を言ったわけではありません」
金「……」
住職「死体は見ないほうがいい。ほとんど原形がないくらいに滅茶苦茶にされてます」
金「……」
金「……そうですか」
金「もういいです。わかりました。一人にしてください」
住職「……」
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その夜、母親は舌を噛んで自殺したらしい。
住職はその子と母親の遺体を丁重に葬ってあげた。
普通より大きいサイズの棺桶に親子を一緒に入れて、「せめてあの世では幸せに暮らせるように」と。
住職と先生二人だけの、静かで悲しい葬式が行われた。
先生「住職さん、真実を村人たちに話すべきでは……?これじゃあの親子があまりにも報われない……!」
住職「……」
先生「どうしてこうなってしまったんでしょう……。誰にも罪などないというのに」
住職「……」
先生「……住職さん!」
住職「……村人には、話せません」
先生「どうしてです!?」
住職「……真実を言ったところで村人たちは信じてくれるでしょうか」
住職「それに、もし信じたとしたら、糾弾されるのは殺しに加担した男共になるでしょう」
住職「私はこの村を守る住職として、村人たちの間に不穏ないさかいを生ませたくない」
先生「……」
住職「このことは、私と先生だけの胸の内にしまいましょう」
先生「……」
先生「……わかりました」