ゆがんだ正義感の暴走
誹謗中傷のなかでは、「ゆがんだ正義感」に基づくものが一番悪質化しやすい。「ゆがんだ正義感」を抱いている者は、コロナ対策で経済的危機を招き、社会を混乱させたのは専門家の責任であり、それを罰してやりたいという彼らなりの「正義感」から、専門家を攻撃するのである。
そして、自分たちは正しいと思い込んでおり、社会に混乱をもたらした専門家は誹謗中傷されて当然だと考えているところが始末に負えない。「正義」に基づく行動は、とかく暴走しやすい。それは、罪悪感を中和してしまうからだ。
ほかにも、前述のような心理的バイアスも相まって、専門家がワクチンを推奨したせいで多数の「ワクチン後遺症」「薬害」が発生しているとか、学校行事などを制限したために子どもの発達に悪影響が出たとか、因果関係が不明確な事象をとらえて、その責任を断罪しようとしているものもある。
しかし、本人は「社会正義」のつもりであっても、その前提が間違っていたり、責任や因果関係が不明確であったりするわけであり、それらを動機として誹謗中傷を行うというのは、正義どころか明らかに「反社会的」である。
もちろん、反対意見を持つことや批判をすることは自由である。言論の自由は何人にも保障されているので、批判をしたいならば、批判すればよい。しかし、批判というものは、相手に敬意を持ちつつ、冷静な意見を合理的な根拠とともに述べるべきものである。
「人殺し」「ゴミ」「クズ」などという攻撃的な言葉を投げかけていたのでは、そもそも議論が成立しない。それは言論ではなく、言語による卑劣な攻撃であり、場合によっては犯罪行為である。真の正義の味方は、誹謗中傷のような卑劣な行動などしない。