「「シャキン!と(はさみの)音がした。ああ。やっぱり切っちゃった」 --- [やっぱり 切っちゃった] ということは 切ると予測していたということだと思う . . . 不作為の従犯か ?
不作為の幇助が成立するのではないかと思っています。 幇助行為の態様に制限はありません。
判例では、夫が子供に暴行を加えるのを止めず子が死亡した場合に、母親がこれを制止しなかったという事案で、母親が夫の暴行を阻止することは著しく困難だったとはいえないとして、傷害致死罪の不作為の幇助を成立させています。
不作為の実行行為が認められるためには、①作為義務があり、②その作為が可能・容易であり、③これにより当該不作為が正犯の行為を容易にしたといえれば不作為による幇助が成立すると考えます。
本件では、①その場に居たのは、甲と妻とVだけであり、甲の行為を止められるのは妻だけであったという事情や、今回の事件のきっかけとなる「嘘をついた行為」を先行行為として法益侵害に向かう因果の流れを設定したといえそうなので、妻の「甲の行為を制止する」という「作為義務」は認められるように思えます。
②確かに、甲は事前準備を入念にしており、行為をするつもり満々ですので、甲の行為を制止するのは至難の業でありそうにも思えます。 しかし、甲の犯意は妻が強姦されたと考えているところにありますので、その妻が甲の行為を制止することは可能・容易であるといえそうです。 警察へ電話をかけることも容易ですしね。
③そして、妻が制止しなかったことや、暴れなかったこと、さらには警察へ電話をしなかったことにより、切断行為を容易にしたといえるため、不作為による幇助は成立するのではないでしょうか。