福井県勝山市で昨年3月、教え子の女子大学院生を絞殺したとして、殺人の罪に問われた福井大大学院の元特命准教授、無職前園泰徳被告(44)=同市=の裁判員裁判の初公判が12日、福井地裁であった。前園被告は殺害行為自体を認めた上で「(院生に)殺してください、もう無理ですと頼まれたので、首をしめました」と嘱託殺人を主張、起訴内容を否認した。
検察側は冒頭陳述で被告と被害者が不倫関係にあったと指摘。犯行当日には「妻子を殺してでも(被告を)手に入れたい」「マスコミに流す」「これから火をつける」などと無料通信アプリLINE(ライン)や電話があり「家族に危害が加えられるかもしれないという危機や、不倫関係が公になり准教授の地位や家族を失うことを回避するために殺害する動機があった」とした。
また、犯行後に死因を交通事故に見せかけ「シートベルトが首にくい込んでいる。息をしていない」と伝え、被告の妻に虚偽の110番通報をさせたり、ドライブレコーダーのデータの入ったカードや、被害者の携帯電話をトイレに流して廃棄し「犯行後に証拠隠滅を図っていた」と指摘した。
弁護側は不倫関係などは認めた上で、被害者は「常に愛情に飢え、ゼロか100かの極端な考え方に陥ってしまう『境界性人格障害』だった」と主張。「(被告は)何度も自殺を止めてきた。何とか生きてもらおうとしたが、『もう無理です。殺してください』と何度も言われ、被害者の望みを受け入れた」として「依頼に基づく嘱託殺人」と訴えた。