どこまで国民の権利を軽んじれば気が済むのか。そう思わずにはいられない発言が、会期中の臨時国会で次々に安倍首相の口から飛び出している。9月30日の衆院予算委員会では、基本的人権を《侵すことのできない永久の権利》と定めた憲法97条が自民党憲法改正草案ではそっくりそのまま削除されていることを民進党の細野豪志議員より問われると、安倍首相はしれっと「条文の整理にすぎない」と明言した。
さらに、昨日3日の同委員会では、今度は民進党の長妻昭議員が、同じように基本的人権について定めた憲法11条の、《現在及び将来の国民に与へられる》という部分が憲法改正草案では削除されていることなどを挙げ、「自民党の責任者として、なぜこういう改正草案を出されたのか、基本的人権に関わる条文をこういうふうに変更されたのか。それをご説明いただきたい」と追及した。
すると安倍首相は、長妻議員を指差しながら「事実誤認がありました」と言い、こうつづけた。
「その事実誤認というのはですね、私が自民党憲法改正草案を出したと言うが、どこに出したんですか? 世に出したのは私ではありません。谷垣総裁のときに出されたわけでありまして。これは屁理屈じゃなくて」
いやいや、安倍首相本人が「憲法改正草案をベースに議論をする」と言ってきたのに、「谷垣時代のものだから」なんて言い逃れが通用するはずがない。これには長妻議員も「『谷垣総裁のときに世に出したものだから、ぼくちゃん知らないよ』というように聞こえた」と応戦したが、安倍首相はこれに激昂したのか、感情的になったときに必ずみせるいつもの早口で、とんでもない話をはじめたのだ。
「『谷垣さんのときに決めたんだから、ぼくちゃん知らない』なんて、私、一言でも言いました? まったく言っていないことを言ったかのごとく言うっていうのは、これはデマゴーグなんですよ。これ典型例ですね」
「ぼくちゃん知らない」というのは、まるで幼稚園児のような道理の通らない責任逃れをするから「ぼくちゃん」と表現しただけだ。それを「デマゴーグだ!」とがなり立てるとは……。これが宰相の発言かと思うとつくづく情けなくなる。
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