福井市中心部の住宅街に昨年末、「学校」が開校した。
空き家を改装した室内には6畳間の教室が二つ。こたつにはミカンが置かれ、本棚には漫画が並ぶ。
主に不登校の小中学生を対象にしたフリースクール「みんなの広場」だ。
代表を務めるのが石田益資(よしもと)さん(34)=福井市。
福井県立大野高時代は生徒会長を務め「親が喜ぶ」と医者を志していた。
しかし「受験勉強を続けて幸せになれるのか」と疑問を感じ、センター試験を「ボイコット」。
英国や台湾の大学で学び、東京で翻訳の仕事に携わった。
副代表の小野寺玲さん(25)=同市=は小学生のころから「命令口調の先生が苦手」で、中2の夏から不登校に。
卒業後は沖縄県のフリースクールに進み、小説と音楽に没頭した。
今は障害者の自立支援に関わるNPO法人で働いている。
昨年夏、偶然出会った二人。既存の学校になじめない子どもの居場所をつくろうと思い立った。
「子どもの気持ちを尊重する」「好奇心を伸ばす」「幸せについて考え、自身や未来を肯定的に捉える」。
三つの理念を掲げた。
不登校の子を持つ福井県内の親の会「やよい会」などによると、小中学生対象のフリースクールは県内初。
開校に当たっては同会も後押しした。
来る時間、帰る時間、食事の時間は自由。夏休みの宿題や通知表、頻繁な試験はない。
自分のペースで好きな科目を自由に学ぶ―。
英国の大学で国際関係学の修士号を取得し、福井市内の塾で英会話を教える石田さんは
「実践的な英語力を磨き、国際感覚を養いたい」と熱く語る。
現在は週3日の開校で、常時、通う子はまだいない。
1週間に1回訪れる福井市内の中学2年、健太君(仮名)は小学生のころからいじめに遭い、中学1年の夏から約半年、不登校だった。
今は登校しているが「学校は『いつまでにあれしなさい』っていうのが多くてストレス。
ここはどんな話も聞いてくれる」と屈託なく笑う。