人工孵化(ふか)したチョウザメに女性ホルモンを与え、全て雌にすることに近畿大が日本で初めて成功した。チョウザメの卵は高級食材のキャビアになる。雌だけ養殖できれば生産効率が向上し、庶民の手が届く価格になるかもしれない。
養殖している孵化4カ月のシベリアチョウザメの稚魚150匹に、女性ホルモンの薬剤を混ぜた餌を半年間与えて飼育。1年後、45匹を無作為抽出して性別を調べると、全て雌だった。
孵化時の性別は半々で外観からは判別できないため、通常は3歳に育ったころ1匹ずつ開腹し生殖腺を調べて確かめる。縫合して養殖池に戻すなどの手間がかかり、人件費は千匹当たり約120万円という。
雄は魚肉として出荷するが、需要は少なく価格が安い。全て雌なら判別が不要で人件費を10%削減でき、キャビアの低価格化につながる。
ただ、女性ホルモンは高価な上、人体への安全性が懸念されることから、養殖魚の餌に使うことは法律で認められていない。このため今後は餌に使える安い植物に由来し、同様の働きを持つ物質に代替することで、低コストで安全な雌化を目指す。