俺はからっぽの警備員
夢もなければ希望もない43歳独身童貞
非正規雇用年収250万円
ある雨夜の仕事どき
道端に誘導棒の光にきらきら反射するものを見つけた
思わず振る手を止めてしゃがみこみ拾い上げた
角の丸くなったガラスの破片だった
海辺ではよく見かけるが工事現場のアスファルトの上に落ちているのは似つかわしくない気がする
しげしげと眺めていると背中から「さぼってんじゃねえ！」と怒号がとんだ
慌てて立ち上がり背筋を伸ばして誘導棒を力任せに振る
角の丸いガラスの破片は警備服のズボンのポケットに押し込んだ