実は、近藤勇もつねさんと出会うまで、たくさんのお見合いをしていました。
しかし、どんな女性に会っても、首を縦には振りませんでした。
それが、つねさんに出会い、やっと結婚を決意したのです。
仲人が不思議に思って、何故つねを選んだのかと勇に尋ねました。
勇は、こう答えたそうです。
「美人は貞淑を欠くのが世の常である。
しかし、醜女は自分が人並みでないことを知っているから、真心を持って夫に仕え、常に控えめで居るものだ。
自分が殊更に醜女を選んだのは、この婦徳ある女性を得たいと願ったからだ」
これが事実なら、ひどい言い草ですよね。
また、男所帯の剣道場を切り盛りする奥方が美人過ぎると、門下生が浮き足立ち、いらぬトラブルの元になると考えたからだ、という説もあります。
しかし、残っている写真を見る限り、つねさんは別に、ことさら醜女というわけではありません。
痘痕の後があるか無いかまでの判別はちょっと出来ませんが、ごく一般的な容姿です。
とにもかくにもこの時代、妻とは夫に仕えるものでした。
「美人でないから選んだ」というより、妻を選ぶにあたって「美人かどうかは重要でなかった」と勇が考えていた可能性はあるのではないでしょうか。
いくら美人でも、天然理心流宗家の奥方に相応しい資質がなければ、実際道場や近藤家を切り盛りしていくことはできません。
なにより、つねさんは武家の娘さんです。
生まれながらにして士分を持たなかった勇は、だからこそ、ことさら身分にこだわる傾向があったようです。
つねさんの出自は大きなポイントだったのではないでしょうか。
ちゅらい