自殺した笹井氏の未亡人も、「週刊新潮」(新潮社)の取材に、「若山教授はちょっと慌てていらっしゃったのか、何かある度に個人的に意見や見解を発表してしまわれていた」ため、その度に笹井氏が対応に追われていたと、若山氏を批判していた。
いずれにしても、若山氏が、関係者の誰よりも早く、この変わり身ができたのは、誰よりも真相をよく知っていたからではないか。そんな気がしてならないのだ。
.............................. しかも、若山氏は疑惑が浮上した途端、前述のように、先走って間違った情報をマスコミにどんどんリークし、ヒステリックな小保方バッシングの空気をつくり上げてしまった。これによって、まともな事実検証ができる状況ではなくなってしまった。
実は、STAP細胞問題は、ほとんど真相が解明されておらず、まだまだ謎はたくさん残っている。理研の調査報告書では、STAP細胞はES細胞だったということになっており、再現実験でもOct4-GFP発現による細胞の緑色発光は確認されず、発光は自家蛍光だと結論づけられた。
しかし、若山氏、笹井氏、丹羽仁史氏ら多くの研究者が、細胞の緑色発光を確認し、それは自家蛍光とは全く違うものだと証言していた。そうした証言との整合性はいったいどうなったのか。
また、Oct4-GFP発現が確認できなかった理研の再現実験でも、STAP様細胞塊の出現は確認されていた。この事実をどう評価するのか。
さらに、疑問なのはSTAP細胞が胎盤を形成したという実験結果だ。ES細胞では胎盤が形成されないため光らないが、STAP細胞を胚に注入した場合は、胎児だけでなく胎盤も光っていたことは、若山氏だけでなく、丹羽氏もはっきり証言していた。発光した胎盤は、その後、どこにいってしまったのか。
そして、もっとも不可解なのは、STAP細胞が実はES細胞だったとして、若山氏はもちろん、笹井氏、丹羽氏ら、この分野の権威たちが揃いも揃って、なぜそのことに気づかなかったのか、という問題だ。
しかし、小保方バッシングによって、関心はワイドショー的なことにばかり集まり、ジャーナリスムがこうした謎の解明に乗り出す空気はほとんどなくなってしまった。
そして、理研もこのメディアのバッシングを一刻も早く収束させようと、中途半端なかたちで、検証実験や原因調査を強引に幕引きしてしまった。証拠もきちんと保全されておらず、おそらく今からこうした真相をもう一度掘り返し、検証するということはかなり難しいだろう。